スタートアップとして事業をスタートしたばかりの頃、事業アイデアやプロダクト作り、資金調達に注力していると、つい後回しにしがちなのが「経理・税務」です。しかし、会社を順調に成長させていくためには欠かせない要素であり、対応を誤ると余計な税金やペナルティが発生するリスクもあります。とはいえ、「税理士に頼むと高そう」「何をどこまで頼めるの?」といった不安や疑問を抱える起業家も少なくありません。この記事では、スタートアップが税理士に依頼するべき業務や、その費用相場、選び方のポイントまでを分かりやすく解説します。1. スタートアップが税理士に依頼する主な業務とは?起業したばかりの企業が税理士に依頼できる業務は多岐にわたります。代表的なものは以下の通りです。記帳代行決算書作成・法人税申告給与計算・年末調整節税やキャッシュフロー改善のアドバイスIPO・M&Aなど将来を見据えた税務対応顧問契約を結ぶ前には、「何が含まれていて、何が追加料金になるのか」を具体的に聞いておくのがポイントです。税理士によって対応範囲が違うので、認識のずれを防ぐためにも契約をする際には、必ず見積りをとり、月額顧問料に含まれるサービスを確認しておきましょう。 2. 費用相場まとめ▶ 結論(スタートアップ初期:年間売上1,000~3,000万円の場合)月額顧問料:3〜5万円決算申告料:18〜25万円最低でも年額54万円ほどはかかると認識しておいた方が良いです。ただし、この顧問料は一律ではなく、いくつかの条件によって変動します。ポイント①:事業の内容によって変わるたとえば、飲食店のように「現金のやり取り」「レジ売上」「仕入れ」が多い業種は、領収書の処理や在庫管理など、経理の手間がかかりやすく、その分顧問料も高くなりがちです。ポイント②:売上が増えると、顧問料も変わる売上が増えると、取引数が増えたり、納税額が大きくなったりするため、税理士が対応する業務量も自然と増加します。そのため、売上が大きい会社ほど顧問料も高くなる傾向があります。ポイント③:面談・訪問の頻度も影響「毎月訪問してもらう」のと「年に1回だけ面談する」では、税理士側の工数が大きく違います。訪問や打ち合わせの回数が増えるほど、顧問料も上がることが多いです。💡 オプション業務には別料金が発生することもたとえば、資金調達のサポートや給与計算、年末調整など、基本の顧問業務に含まれないサービスを依頼する場合は、別途料金が発生するのが一般的です。3.税務顧問料を安くするための工夫スタートアップ向けの割引を利用するスタートアップを対象とした顧問料の割引プランを用意している事務所が増えてきています。こうした事務所は、単に料金が安いだけでなく、スタートアップを応援したいという想いを持っており、創業初期に特有の税務や会計に精通しているケースが多いです。そういう意味でもスタートアップ向けに顧問料を割引しているところにお願いするのは費用面でも専門性の面でも賢い選択なのではないでしょうか。少し手前味噌にはなりますが、私たちの事務所のスタートアップ割引プランの税務顧問料の例も掲載しておりますので、他の事務所様と比較される際の参考材料としてご覧いただければ幸いです。※詳細な料金は企業によっても異なってきますので、あくまで参考程度に留めておくようお願いします。 業界水準(同等クオリティ)HERITAGE通常料金HERITAGEスタートアップ応援前提条件面談回数WEB・訪問売上高比例面談回数WEB・訪問売上高比例初めての会社設立で弊所が認定する基準を満たしている法人期間ーー設立1期目まで税理士顧問料(月額)30,000-50,000円25,000円-45,000円25,000円法人税申告(年額)100,000-200,000円150,000円上記に含む消費税申告(年額)50,000円50,000円上記に含む会計チェック料(月額)10,000円10,000円クラウド会計+自計化年末調整別料金(人数比例)別料金(人数比例)無料(5名まで)償却資産税別料金(資産比例)別料金(資産比例)無料税務署などへの一般的な届出30,000-50,000円無料無料クラウド会計導入(初年度のみ)200,000-300,000円別料金無料税理士or社労士給与計算別料金or社会保険労務士別料金or社会保険労務士初期導入サポート社労士社会保険手続き社会保険労務士社会保険労務士初期導入サポート年間料金(初年度)100万円超+社労士90万円前後+社労士30万円+クラウド会計面談数を減らす税理士との面談頻度によっても顧問料は大きく変わります。月1回、3か月に1回、半年に1回などの訪問頻度のほか、完全にオンラインでのやり取りに切り替えることで、さらに費用を抑えることもできる場合があります。実際、スタートアップ向けの割引を提供している税理士事務所の多くは、ITツールの活用により業務効率化を図っており、訪問の手間を省くことで安めの価格設定を実現しています。見積もりの際に月額顧問料に含まれるサービスを確認するこれは安くするためというよりは、想定よりも高い料金を請求されないために気をつけておくべきことなのですが、最初の面談や見積もりの際に、顧問料にどんな業務が含まれているか、また追加の業務が発生した場合はどのような料金体系になっているかを確認しておきましょう。一般的な例が知りたい方向けに、私たちの事務所の具体的な業務範囲について下記に記載していますので、よろしければ参考にしてみてください。上記料金に含まるもの・日常的な税務相談・事業計画、財務計画の相談・資金繰りの相談・資金調達(借入に関する一般的なもの)に関する相談・会計処理の確認、指導・試算表の作成及び期中面談・決算書、法人税申告書、消費税申告書の作成上記料金に含まれないもの・事業計画書、資金繰り表、予実管理表、契約書、議事録などの書類作成・助成金、補助金の申請書作成・資金調達(増資、ストックオプションなど資本政策に関するもの・借入に関する特殊なもの)に関する業務・減資に関する業務・組織再編、事業承継に関する業務・国際取引、国際税務に関する業務、為替換算を要する業務・不動産の売買に関する業務・証券の売買に関する業務・法人の株価の算定・税務調査の立ち会い・個人に関する税務(所得税、相続税、贈与税など)・弁護士、司法書士、社会保険労務士、行政書士など他士業の分野に関する業務自社で対応できる業務は自社で行う当たり前のようですが、資金調達や助成金・補助金の申請など、自分たちで対応できる業務は、極力社内で行うことでコストを削減できます。また、業務によっては税理士ではなく、社労士や行政書士など他の専門家に依頼したほうが安価に済むこともあります。業務の内容に応じて、最適な専門家を選ぶという視点も重要です。4. 安く済ませることだけが“正解”ではない費用を抑える工夫はとても大切ですが、価格の安さだけで税理士を選んでしまうと、対応の遅さや的確なアドバイスが得られないことで、結果的に本来節税できたはずの税金を余分に払ってしまうリスクもあります。さらに、将来的に上場やM&Aを目指す際に、過去の税務処理や資本政策が障害になることも。特にスタートアップにとっては、資金調達・人材採用・資本政策など、日々の経営判断にスピードが求められます。だからこそ、「すぐに相談できる信頼できる税理士」と顧問契約を結ぶことが、長期的には費用対効果の高い投資になると言えるでしょう。以下に安かろう悪かろうを防ぐチェックリストを掲載しておくので、これに当てはまっているかどうか、無料相談などの際に活用してみてください。チェック項目解説・確認すべきポイント① 料金体系は明朗か月額顧問料、決算申告料、スポット業務、オプションの有無が事前に明記されているか。② 業務範囲は明確か顧問料に「記帳」「給与計算」「年末調整」「経費精算」など何が含まれているかを明確にする。③ 使用している会計ソフトfreee / マネーフォワードなど、クラウドの会計ソフトに対応しているかどうか。④ クラウド・チャット対応Slack / Chatwork / LINE / Zoom などで日常的なやりとりが可能か。メール・電話文化の事務所だと非効率になることも。⑤ レスポンスの早さ「連絡してから何日以内に返信」「急ぎのときはどうするか」など、対応スピードの期待値を確認。⑥ スタートアップ支援実績同じようなフェーズや業種の企業を支援した経験があるか。資金調達や株式まわりの知識があるか。⑦ 担当者は固定か・変更が可能か毎回同じ担当者が対応してくれるか。相性が合わなかった場合に変更できるか。⑧ スタートアップ特有の税制に精通しているかどうかエンジェル税制などスタートアップならではの税制に精通しているか。⑨ 他士業との連携体制社会保険労務士、司法書士、行政書士などと連携してトータルで支援できる体制かどうか。⑩ 契約期間と解約条件契約は月単位か年単位か。いつでも解約できるか、最低契約期間があるか。⑪ 初回相談での対応姿勢質問に親身に答えてくれるか、押し売りせずこちらの状況を丁寧に聞いてくれるか。⑫ 自社フェーズに合った支援レベルか創業期・成長期・IPO準備期など、どのフェーズに強いか。今の自社に最適かを見極める。上記の中から「自社にとって重要なポイント」に優先順位をつけて面談時に聞くのがオススメです。初回相談の場では、上記チェックリストをメモしておき、「この部分ってどうなりますか?」と質問するだけでも、信頼できる税理士かどうかが見えてきます。 5. 税理士の探し方では具体的にどのように税理士を探すかについてです。オフラインの場であれば紹介してもらうのが一番良いでしょう。ネットで探す場合は、Google検索や税理士ドットコム、ミツモア等を利用するのが良いでしょう。いずれにしても、チェックリストの項目を満たしているかは確認し、複数から見積もりをもらい、比較することが重要です。