令和6年度の税制改正要望にて、「イノベーションボックス税制」の創設が掲げられました。以下にイノベーションボックス税制の概要とそのメリットについて解説します。イノベーションボックス税制の概要イノベーションボックス税制は、特許等の知的財産から⽣じる所得に優遇税率を適⽤する制度です。研究開発拠点としての⽴地競争⼒の強化やイノベーションを促進することを目的として創設されました。制度の対象となる所得と算出イメージについては以下の通りとなります。経済産業省「我が国の⺠間企業による イノベーション投資促進に関する研究会」他のスタートアップ支援制度・税制との違いそれでは、イノベーションボックス税制は他の制度と何が違うのでしょうか。一言で表すと、イノベーションボックス税制は「アウトプット」に着目した優遇措置です。知的財産から生じる所得に対して税制上の優遇措置を設けることで、企業の研究開発投資意欲を高め、イノベーションのサイクルを加速させることが主眼に置かれています。以下の図は、経済産業省がスタートアップ支援のための制度を図式化したものですが、各制度の違いが一目で分かるようになっています。ちなみにですが、上の図の用語を解説すると「魔の川」とは基礎研究から応用研究への移行段階において直面する障壁を指す。理論や実験室レベルでの発見を、実際の製品やサービスに応用されるための具体的な方法を見出す必要があるが、実際には研究成果が製品開発に結びつかないケースも多いため、魔の川と呼ばれる。「死の谷」とは応用研究から商業化へのプロセスで遭遇する、資金調達の難しさを表している。この段階では、開発のための相当な資金調達が必要であり、経営判断の難しさから失敗するケースも多い。「ダーウィンの海」は製品が市場に導入された後、激しい競争の中で生き残り、成功を収めるために直面する壁を指す。この段階では、市場のニーズに合致する製品の開発、効果的なマーケティング、そして競合他社との差別化が重要となる。生物の進化における自然選択のプロセスに喩えられ、市場において最も適応した製品のみが生き残ることを意味する。各国の研究開発税制・イノベーションボックス税制の導⼊状況イノベーションボックス税制は、欧州を中心に多くの国で導入されています。各国では、国際的な税務競争に対応し、自国内での企業活動を促進するために、この税制の活用を進めています。イノベーションボックス税制のメリット1つはこれが税制として取り入れられたというのが大きいです。企業は、税制による優遇を補助金よりも好むという意見があります。これは、補助金が一時的であるのに対し、税のランレートが下がることで予測可能性が高まり、継続性が見込めるため、市場からの評価が高くなるからです。本制度が導入され、税率のランレートが低い環境で収益を上げることができれば、例えば外国の企業が自ら選んで日本に拠点を設けるようになるという点が期待されています。またそのためには優遇税率にインパクトを持たせ、日本の存在感を高めていく必要があるといったことも議論がされている。まとめイノベーションボックス税制は主に研究開発のアウトプットに主眼を置いたものであり、この新しい税制が研究開発に対するインセンティブとしてどのように機能するかが議論されました。インプット(研究開発の投資)とアウトプット(研究開発から生み出される成果)の間の関連性に焦点を当て、イノベーションの循環を強化するための方策を模索していく必要がまだまだありそうです。