エンジェル税制について一から解説していきます。2024年4月から施行された税制改正の内容も反映されているため、最新の税制について知ることができます。他のサイトでは最新の税制についての情報が反映されていないこともあるので注意が必要です。本記事では最新の情報を基に作られているので、知識をアップデートしたい方はぜひご覧になってください。エンジェル税制とは?エンジェル税制は、国内のベンチャー企業へのエンジェル投資を促進するために導入された優遇税制のことです。個人のエンジェル投資家がベンチャー企業に投資を行った場合、投資時点と売却時点のいずれの時点でも税制上の優遇措置を受けることができます。1.投資時点の優遇措置について投資時点では主に優遇措置A、A-2、B、プレシード・シード特例、起業特例のいずれかを利用できます。優遇措置A、A-2では主に所得税が軽減でき、優遇措置B、プレシードシード特例では株式譲渡益が控除されます。また、自身が企業する際の自己資金による出資額の全額を株式譲渡益から控除できる起業特例といった制度もあります。2.売却時点の優遇措置について(譲渡損失の繰越控除)縁起でもない話ではありますが、投資した企業が倒産する際、株の売却により損失が発生してしまいます。その場合、その年の他の株式譲渡益と通算(相殺)できるだけでなく、その年に通算(相殺)しきれなかった損失については、翌年以降3年にわたって、順次株式譲渡益と通算(相殺)ができます。つまり、スタートアップへの投資で発生した損失は上場株式、投資信託(配当金は除く) 、ETF、未上場株式などと損益通算ができるということです。有償新株予約権の取り扱いと税制改正について令和6年度税制改正により、有償新株予約権の取得に関する取り扱いが変更されました。個人投資家が発行会社の株式を取得する際に、新株予約権の行使日(新株予約権の行使日)でエンジェル税制の全ての要件を満たす場合、一部の新株予約権の取得に要した金額も、税制の対象に含めることとなりました。ここで重要なのは、以下のポイントです。対象となる新株予約権:取得時に払込を行う新株予約権(いわゆる有償新株予約権であり、J-KISS等)です。適用開始日:2024年4月1日以降に新株予約権を取得した場合のみ対象となります。適用の条件:経済産業大臣の認定を受けた少額電子募集取扱業者(ECF)経由の投資については、令和6年度税制改正による本措置の適用を受けることはできません。税制適用タイミングの例以下の図は、有償新株予約権を取得した際の税制適用のタイミング例を示しています。新株予約権の取得:例えば、2024年5月1日に1,000万円で新株予約権を取得した場合、この時点では税制適用は受けられません。権利行使:その後、権利行使を行い株式に転換した場合、税制の要件を満たしていれば、取得時の払込金額1,000万円も含めて株式取得年の所得に対する確定申告で適用を受けることができます。※経済産業省のHPより引用企業側の申請手続き申請手続きの概要エンジェル税制を適用させるための申請手続きは、主に企業が行います。投資を受ける前に税制の適用対象かを判定する事前確認制度を利用するかどうかで手続き内容が異なります。事前確認制度を利用する場合は、事前確認書の申請を投資前に行います。企業側の手続きが完了し確認書を取得したら、個人投資家に確認書を送付します。この確認書を持って投資家が確定申告を行うことで税制が適用されます。具体的な申請手続きの例ここからは実際の申請手続きをどのように行っていくのかについて解説します。申請内容の確認事前確認制度を利用するか、払込後確認を行うのかなど申請内容を都道府県の担当者とやりとりしながら決めていく。申請書類の作成提出すべき書類を順次作成する。申請書類の仮提出(電子データ)作成した申請書類を電子データにして、メールやクラウドで都道府県の担当者に送り、内容に間違いがないかを確認してもらう。申請書類の本提出(郵送)全ての書類の仮提出が終わり、不備がないことが確認できれば、郵送によって各都道府県へ書類を提出する。確認書の取得申請書類の提出が完了し、都道府県の手続きが終わり次第、確認書が発行される。企業側は発行された確認書を投資家に送付することで、投資家が確定申告の際に税制適用を受けられる。企業側の状況によって手続きの順序は多少前後しますが、上のような流れで手続きすると思っていただいて大丈夫です。大まかな流れとしては、要件を満たしているか確認→申請書類提出→確認書取得、となります。申請書類はミスがないように作成しましょう。申請スケジュール企業側は要件自体はクリアしていることが多いですが、申請にどの程度の期間がかかるのかを理解しておらず、手続きが間に合わなかったという事例が多発しています。皆さんはエンジェル税制を確実に適用できるようにスケジュールをきちんと把握しておきましょう。まずは期間の把握です。申請書類の準備や手続きに2ヶ月、申請後の確認書交付までに1ヶ月程度かかります。企業側はこの確認書取得までの手続きを、投資家の確定申告がある2・3月までに完了させておく必要があります。そのため、投資があった年の秋ごろには手続きに取り掛かっておくべきでしょう。ギリギリになればなるほど都道府県側も混み合い手続きが想定よりも長くなってしまうこともあるので手続きは早め早めに行いましょう!どこかのタイミングで申請手続きをするのであれば、今から手続きを始めて早めに済ませておくのがおすすめです!あまり知られていない企業側のメリットあまり知られていませんが、この税制は企業側にも直接的なメリットがあります。企業は「エンジェル税制の適用企業であれば、日本政策金融公庫の融資を通常より低い金利で受けられる」ことがあるというメリットも存在します。もちろん低金利の融資には、他にも条件を満たす必要があります。エンジェル投資と合わせて融資を検討中の方は、エンジェル税制を適用することによる利点が大きいのではないでしょうか。スタートアップ企業の方がまず初めにやるべきこと税制の適用を受けたい企業がまず初めにやるべきことは、税制の要件を満たしているかチェックすることです。各社の状況によって、満たすべき条件は異なるため、中小企業庁や東京都庁のエンジェル税制要件チェックシートを用いて確認してみましょう。https://angel-tax.tokyo/requirement/index.php要件を満たすことが確認できたら、申請書類の作成を行います。結構面倒くさいと思うので、毎日コツコツと作成していくことをおすすめしています。あとは申請手続きのところで書いた順序で手続きを行っていきましょう。今後の動向について令和5年度税制改正によってエンジェル税制の適用要件が緩和され、非課税の措置を導入したり、申請書類が簡素化されました。これによりエンジェル税制適用へのハードルが下がり、積極的に活用しようとする企業・投資家の数が増加するでしょう。実際にエンジェル税制を利用する企業・投資家の数は年々増加しています。※中小企業庁のHPより引用資金調達の一つの手段として、エンジェル投資を活用してみるのも良いのではないでしょうか。ぜひ一度自社で検討してみることをおすすめしています。エンジェル税制についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。🔗エンジェル税制【よくある質問と注意点まとめ】🔗【2025年最新版】起業特例を徹底解説