エンジェル税制とは?エンジェル税制は、国内のベンチャー企業へのエンジェル投資を促進するために導入された優遇税制のことです。個人のエンジェル投資家がベンチャー企業に投資を行った場合、投資時点と売却時点のいずれの時点でも税制上の優遇措置を受けることができます。今回はそんなエンジェル税制について勘違いしやすい、かつ重要なことを各項目ごとにまとめたので最後まで読んでいってください!エンジェル税制に適用できるか【ケース別に解説】こんな場合はエンジェル税制は適用できるの?という質問が多かったので、以下のケースで適用できるのかを順に解説していきます。法人による出資エンジェル税制は個人投資家によるもの限定であるため、法人による出資は対象外です。有償新株予約権(J-KISS)新株予約権のひとつに J-KISS(シリコンバレー型の新株予約権)があり、主にシード期の資金調達において近年利用されています。通常の新株予約権のように権利を行使して株式を取得した際にある一定額の金銭の払込がある場合にはエンジェル税制の減税効果があります。令和6年度税制改正により、個人投資家が発行会社の株式を取得する際に、新株予約権の行使日(新株予約権の行使日)でエンジェル税制の全ての要件を満たす場合、一部の新株予約権の取得に要した金額も、税制の対象に含めることとなりました。ここで重要なのは、以下のポイントです。対象となる新株予約権:取得時に払込を行う新株予約権(いわゆる有償新株予約権であり、J-KISS等)です。適用開始日:2024年4月1日以降に新株予約権を取得した場合のみ対象となります。2024年3月31日以前に権利取得した場合は対象外です。適用の条件:経済産業大臣の認定を受けた少額電子募集取扱業者(ECF)経由の投資については、令和6年度税制改正による本措置の適用を受けることはできません。税制適用タイミングの例以下の図*は、有償新株予約権を取得した際の税制適用のタイミング例を示しています。新株予約権の取得例えば、2024年5月1日に1,000万円で新株予約権を取得した場合、この時点では税制適用は受けられません。権利行使その後、権利行使を行い株式に転換した場合、税制の要件を満たしていれば、取得時の払込金額1,000万円も含めて株式取得年の所得に対する確定申告で適用を受けることができます。※経済産業省のHPより引用新株予約権(ストックオプション)新株予約権(ストックオプション)については、取得時点では対象になりませんが、それを行使して株式を金銭の払い込みにより取得した際にエンジェル税制の対象になります。※新株予約権による株式取得は、ストック・オプション税制による非課税の特例の適用を受ける場合、同時にエンジェル税制の適用を受けることはできませんのでご注意ください。種類株式(優先株式)による投資種類株式(優先株式)による投資は対象となります。例えばVCにA種株式を発行し、エンジェル投資家にも同じA種株式を発行した際にはエンジェル税制が適用されます。海外居住者・外国人による出資エンジェル税制は、居住者または恒久的施設を有する非居住者が対象です。そのため、条件を満たしていれば外国人や海外居住者でも対象となります。エンジェル税制の対象外となる企業以下に示す企業はエンジェル税制の対象ではありません。上場企業、合同会社、会社分割、新設合併で設立された会社、子会社の支配・管理のみを行う純粋持株会社、有限責任事業組合(LLP)経由の投資、投資先企業が外国法人の場。エンジェル税制の対象外となる投資手段エンジェル税制が適用されるのは金銭の払い込みのみになります。そのため、他人から譲り受けたり、デットエクイティスワップや不動産など現物出資による取得、相続による取得、債務の出資金への振替などの代用払込による取得などは税制優遇の対象とはなりません。エンジェル税制の法律や様式に使われる「払込日」「払込期日」「払込期間」「成立の日」「基準日」の意味についてこの語句の意味が分からない、という方が多かったので中小企業庁の語句を引用する形で掲載しています。<払い込み日>投資家が対象企業に投資額を払い込んだ日を指します。対象企業に金銭を持ち込んだ日、あるいは対象企業の口座への振込日です。<払込期日> 払込期日とは、有価証券の募集における払込の最終期限のこと。新株発行を引き受けた場合には、払込期日から株主となるために、払込期日は新株発行の効力を確定する基 準日となる。<払込期間> 払込期日が1日だけでなく2日以上で設定する場合、その期間を指します。払込期日との意味の違いは、払込期間を定めた場合は、株式の引受人は、払込期間内で実際に払込 をなした日から株主となるという違いがあります。<成立の日> 登記事項証明書に記載されている企業の設立日を指します。<基準日> 場合によって異なります。1.払込期日が定められている場合:払込期日 2.払込期間が定められている場合:払込日(出資の履行をした日) 3.会社設立時の出資でエンジェル税制を適用する場合:会社成立の日 4.事前確認制度を利用する場合:申請日その他よくある質問優遇措置A・A-2・B、プレシード・シード特例の併用はできるのか?投資家は同一銘柄については優遇措置A、優遇措置A-2、優遇措置B、プレシード・シード特例を利用することはできません。一方で、銘柄が異なる場合においては、それぞれの措置を選択して利用することが可能です。事前確認制度を利用した場合、事前確認書の有効期限はいつまでか?ほとんどの場合、申請が行われた日の属する事業年度末までです。ただし、申請した優遇措置(AまたはB)の適用期限が事業年度末より早く到来する場合は当該適用期限が有効期限となります。例…会社設立日:3月11日決算日:2月28日申請日:10月31日有効期限:令和4年10月31日〜令和5年2月28日エンジェル税制はふるさと納税に影響を及ぼすのか?優遇措置Aでは、以下の赤字で囲われた寄付金控除として合算して計算されるため、ふるさと納税の上限額に影響を及ぼします。ふるさと納税は所得税と住民税、エンジェル税制は所得税で計算するなど、条件が複雑に絡むことで上限額の算定は見かけよりも難しいものとなります。そのため、どの程度影響が出るかを一概に示すのは困難であり、正確な上限額の算出については税理士への相談をおすすめします。エンジェル税制Bの「その年の株式譲渡益から控除」の「株式譲渡益」とは何を指すのか?上場株式、投資信託(配当金は除く)、ETFや未上場株式が対象となります。スタートアップ企業へ投資した年に、投資額全額をこれらの株式譲渡益から控除できます。ここまでエンジェル税制について解説してきました。複雑で理解しにくい部分もあると思いますので、何か疑問点などあればHPからお気軽にお問い合わせください!エンジェル税制に強い税理士がお答えいたします!