「エンジェル税制」という言葉が最近のニュースで耳にすることが増えたかもしれません。令和5年度の税制改正によって、起業家に向けた新たな支援策として、「起業特例」という制度が導入されました。今回は、起業する人は知っておきたい起業特例という制度について解説していきます。起業特例の概要エンジェル税制の起業特例は、自ら保有する株式を売却して、スタートアップを起業する場合、設立時の出資額について、その年の株式譲渡益から控除し、20億円を上限として、非課税となる制度です。ここでいう「株式譲渡益」は、一般の株式や上場株式の売却によって得られる利益のことです。この特例を受けるには、新しい会社が設立された年の12月31日時点で、特定の条件を満たしている必要があります。会社を設立した後、発起人はその条件を満たしていることを都道府県に確認申請します。起業特例の概要とスケジュールについては以下の通りです。起業特例のメリット起業特例のメリットについて説明します。例えば、会社をM&Aするなどして、2億円のキャピタルゲインを得たとします。このうち1億円を新しい会社に出資すると、1億円を株式譲渡益から控除することができます。起業特例の場合、所得税を非課税にすることができるので、1億円の15%、つまり1500万円を節税できます。このように、起業特例はキャピタルゲインに対する非課税措置として非常に効果的で、多くの起業家が利用することが期待されています。起業特例の要件 ①スタートアップ要件起業特例を適用するためには、以下に記載してある企業要件を、会社を設立した年の12月31日時点で満たすことが必要になります。1.設立1年未満の中小企業者であること2.下の表にある設立経過年数(事業年度)毎の要件を満たすこと3.外部(特定の株主グループ以外)からの投資を1/100以上取り入れている会社であること4.大規模法人グループの所有に属さないこと5.未登録・未上場の株式会社であること6.風俗営業等に該当する事業を行う会社でないこと7.他の事業者から譲り受けた事業を主たる事業としていないこと特に、以下の条件を満たしているかには注意が必要です。Ⅱ 役員2名又は役員1名と正社員1名がいること。Ⅲ親族関係のない第三者が1%以上株を保有すること。(贈与でもOK)Ⅶ 他の会社の事業を譲り受けず、新しい事業をスタートすること。これらの条件を満たさない場合は、起業特例の適用が受けられない可能性があるので注意が必要です。起業特例の要件 ②起業家要件起業特例の適用を受けることができるのは、スタートアップの発起人のみです。また、発起人が起業特例を適用するためには会社の成立時点で起業家要件を満たす必要があります。起業家要件は、以下に示す3つの条件を満たさなければいけません。1.設立した会社の発起人であること2.設立した会社に自らが営んでいた事業の全部を承継させた個人及びその親族等でないこと3.金銭の払込みにより株式を取得していること手続きの流れ以下の流れで手続きを行います。1.個人は、発起人として株式を引き受けて出資金を払込み、株式会社を設立します。2.出資を受けた株式会社は、要件を満たしていることの確認申請を、都道府県に対して行います。3.発起人(個人)は、都道府県からの確認書を添付して税務署に確定申告を行います。起業特例申請時の提出書類起業特例確認申請時の確認提出書類は以下の通りです。起業特例の確定申告時に提出する書類は以下の通りです。書類は余裕を持って申請するようにしてください。特に、確定申告期限が近づいている場合、確認書の交付が遅れる可能性があります。そのため、要件を満たした後はできるだけ早く申請を行うことをお勧めします。まとめ起業特例は、既に一度事業を立ち上げた経験のある起業家にとって、次なる事業への挑戦を奨励する目的で設けられています。これによって、日本でも連続して新たなビジネスを創出する動きが期待されています。これから起業を考えている方はぜひこの制度を活用してみてください。税理士事務所HERITAGEは起業特例の申請支援を行っています。手続きについて少しでも不安がある方はぜひ一度お問合せください。