AI×バックオフィスのLayerXがシリーズBで150億円を調達した。リードはNetflixやSpotify等に出資する米成長株投資家TCV。同社にとって日本スタートアップへの初投資でもあり、国内SaaS×AIの評価が一段押し上げられた格好だ。調達資金はエンジニア採用を中核とした体制強化と、AIエージェント事業の加速に投下される。出資陣にはTCVのほか、三菱UFJ銀行、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、JAFCO、Coreline Ventures、Keyrock Capital Management、JPインベストメントが名を連ねる。LayerXは「AIを活用した生産性向上を通じ、世界市場でも競争力のある報酬体系を目指す」とし、エンジニア採用・セールス体制拡充・AIファーストな働き方の整備に資金を振り向ける方針だ。LayerXの事業の柱は二つ。一つは、稟議・経費精算・請求書・法人カードなど企業の支出業務をAIで自動化するクラウド「バクラク」。すでに累計15,000社に導入が進む。もうひとつが、企業内のデータと業務文脈に寄り添う生成AIプラットフォーム「Ai Workforce」だ。業務オペレーションと一体化するAIを設計し、エンタープライズでの実装を加速させている。また、LayerXは今回のラウンドと同時に、三菱UFJ銀行と戦略的パートナーシップを締結。以前の「バクラク for MUFG」に加え、「Ai Workforce」を用いた営業現場のナレッジ活性化や新規事業共創を進める。メガバンクの顧客基盤・決済ドメインと、LayerXのAI×業務プロセス設計力が結びつくことで、金融領域の運用精度とスピードを押し上げる狙いだ。目標は2030年度にARR1,000億円。うち約半分をAIエージェント関連で稼ぐ計画を掲げる。生成AIの台頭で一部に広がるSaaS不要論に対し、LayerXは「AIはデータとワークルーム(データ、ツール、コンテキスト)を必要とし、その接点こそSaaS」という立場を明確化。業務プロセスに密着したAIネイティブSaaSが、むしろ最大の成長ドライバーになるというロジックだ。また本ラウンドの意義は、単なる大型調達にとどまらない。第一に、海外有力投資家の視点が日本のAIネイティブSaaSへ本格的に向き始めたこと。TCVの日本初投資は象徴的で、プロダクト速度・実装力・市場規模の三拍子をそなえたチームに資本が流入しうることを示した。第二に、メガバンクとの戦略的連携が、PoCの壁を越えてAIの商用展開を広げる起爆剤となりうることだ。同社の足元の注力は採用と生産性設計である。AIの内製活用で一人当たりの付加価値を高め、報酬原資をつくる→優秀人材を惹きつける→製品速度が上がるという好循環を狙う。業務の目に見えない面倒を分解し、数多のタスク特化型エージェントで埋めていくアプローチは、精度とオペレーションの構築が勝負である。金融・商社をはじめとする大企業の複雑な要件を通過点にできれば、国内外へのユースケース横展開は一気に加速するだろう。150億円のシリーズB、TCVの日本初投資、MUFGとの戦略提携、そしてARR1,000億円という野心的なKPI。LayerXは「AIエージェント×SaaS」の勝ち筋を、LayerXは「AIエージェント×SaaS」の勝ち筋を、良質な業務データと業務設計に据えた。バックオフィスの基盤として機能するAIの本格普及は、ここからが本番だ。