プレシード・シード特例とは、2023年の税制改正によって導入された新たな制度であり、スタートアップへの投資をよりしやすくする目的で導入されました。2023年4月から既に導入されており、優遇措置Bよりも良い条件なので導入を検討する企業が増えています。今回は、以前の制度との違いを中心にプレシード・シード特例について解説していきます。まずは、以前までのエンジェル税制について解説していきます。以前までは、優遇措置A・Bだけが存在し、Aは総所得、Bは株式譲渡益からエンジェル投資をした金額だけ控除することができました。現行の優遇措置A・Bに加えて、今回新設されたのがプレシード・シード特例と起業特例です。その中でも今回はプレシード・シード特例を中心に解説します。プレシード・シード特例とはこの特例は、優遇措置Bを投資家にとってより良い条件になるように改良された制度です。優遇措置Bでは投資した金額を株式の譲渡益から控除でき、節税の恩恵を受けられるというものでした。しかし、投資時点で控除されるものの、売却時点で結局課税されてしまい、実質的には課税されるのが延長されただけでした。この問題を解消したのが、プレシード・シード特例です。上記の図にある通り、投資時だけでなく、売却時にも非課税になりました。しかし、年間20億円の上限があったり優遇措置Bよりも適用するための要件が厳しくなったりしているのでそこは要注意です。具体的には、優遇措置Bの適用要件に加えて、⑧事業計画(試験研究費等の対出資金額比率>30%の見込みを記載)を有する⑨売上高=0の場合、営業損益<0、⑨売上高>0の場合、営業損益<0かつ試験研究費等の対出資金額比率>30%という要件が追加で課されています。優遇措置Bに比べて好条件で投資が行えるため、一度適用を検討してみるのも良いのではないでしょうか。起業特例とは最後に、プレシード・シード特例と併せて新設された起業特例について解説します。エンジェル税制の起業特例は、自ら保有する株式を売却して、スタートアップを起業する場合、その設立時の出資額をその年の株式売却益から差し引き、20億円を上限として非課税にできる制度です。ここでいう「株式売却益」は、一般の株式や上場株式の売却によって得られる利益のことです。この特例を受けるには、新しい会社が設立された年の12月31日時点で、特定の条件を満たしている必要があります。会社を設立した後、発起人はその条件を満たしていることを都道府県に確認申請します。起業特例の概要とスケジュールについては、以下の通りです。起業特例のメリット起業特例のメリットについて説明します。例えば、会社をM&Aするなどして、2億円のキャピタルゲインを得たとします。このうち1億円を新しい会社に出資すると、1億円を株式譲渡益から控除することができます。起業特例の場合、所得税を非課税にすることができるので、1億円の15%、つまり1500万円を節税できます。このように、起業特例はキャピタルゲインに対する非課税措置として非常に効果的で、多くの起業家が利用することが期待されています。起業特例は、既に一度事業を立ち上げた経験のある起業家にとって、次なる事業への挑戦を奨励する目的で設けられています。これによって、日本でも連続して新たなビジネスを創出する動きが期待されています。これから起業を考えている方はぜひこの制度を活用してみてください。最後に国のスタートアップ5ヵ年計画にもある通り、スタートアップ起業への支援制度が拡充されてきています。起業家やエンジェル投資家の方は、これらの制度を上手く活用してください。もしこれらの制度の活用に興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。