経産省の有識者会合が、R&D投資から知財活用、スタートアップ投資、海外マネー呼び込みまでを見直す中間取りまとめを公表した。柱は①研究開発税制、②イノベーション拠点税制、③オープンイノベーション促進税制、④外国組合員特例税制(PE課税特例)の4つ。この記事を読めば、税制に対して国がどのような考えを持っているかが分かります。これらは案段階ではあるが、今後の税制改正にも影響を及ぼすと考えてよいでしょう。1. 研究開発税制新類型設置の有無最重要トピックは、量子・AI・バイオ等の国家的に重要な「戦略技術領域(仮称)」に対する新類型の創設である。現行の一般型とは別枠で、より高いインセンティブ(高控除率・別上限など)を想定する。領域選定は、①企業が研究開発を既に実施している/実施すべき分野②税インセンティブの効果が大きい分野③国としての重点的に予算を投じている/投じようとするなど優先順が高い分野――を軸に行う。またその際、親類型に該当しているかの確認プロセスは簡素・明確化して事務負担の増加を抑えなければいけないことも言及されている。中堅企業へのインセンティブ増次に中堅企業(従業員2,000人以下)への対応について。中堅企業は、研究開発に熱心に取り組む企業と労働生産性の間に正の相関があるが、研究開発費を大企業ほど増やせていない。研究費が伸び切らない実態を受け、研究開発に熱心に取り組む中堅企業に対し、大企業より高いインセンティブを講じることを目指す。大学等の拠点化大学・公的研究機関との共同・委託研究の新枠(拠点型)も論点となった。手続きや第三者確認の合理化で産学連携を加速する。あわせて高度研究人材の要件見直しや、ソフトウェア/サービス開発を含む試験研究費の範囲の明確化、効果検証(EBPM)の強化にも言及。量だけでなく質の観点を取り込み、エビデンスベースでの制度運用を狙う。2. イノベーション拠点税制令和7年4月に創設されたイノベーションボックス税制は、知財のライセンス等の収入に対して優遇する新制度。中間取りまとめは、早期の見直し・拡張に前向きだ。具体的には、(1)制度開始前に研究開発が完了している知財の扱い(2)合併・分割等で承継した知財(3)実用新案など他知財(4)グループ内で第三者ライセンスを想定するケース(5)大学発スタートアップの活用――など頻出するケースへの取り扱いに対して指摘があった。移転価格税制やBEPS基準との整合も課題で、来春改正に向けた調整が示唆される。3. オープンイノベーション促進税制:M&A・少数持分も視野スタートアップ育成計画と連動し、M&Aや少数持分(50%以下)の株式取得を促す方向で検討。既存事業との接続、実装の加速、エグジットの多様化を狙い、事業会社/CVCの投資行動を後押しする。大企業が合弁・提携・買収を柔軟に組み合わせられるよう、インセンティブの対象範囲を再設計する狙いだ。4. 外国組合員特例税制(PE課税特例):海外マネー流入の阻害を解消海外機関投資家が日本のLPを通じて投資する際の予見可能性の不足が、クロスボーダーの資金流入を阻害している。指摘点は、(1)持分25%上限が大口投資を難しくする(2)LPへ通常認められている承認行為等まで事実上禁止されている(3)国内 LPS への投資につき1つでも特例要件を満たさない場合、他の国内 LPS についても特例を適用できない(4)特例申告の負担が重い(5)他の特例と二重手続が生じ得る――等。国際比較でも制度ギャップが大きく、要件と手続の見直しで投資障害の除去を図る方針だ。まとめ今回の中間整理は「方向性の宣言」であり、来春の税制改正に向けた制度設計のブラッシュアップが予告されている。R&Dの“量と質”、知財の“稼ぐ力”、スタートアップ投資資金の循環――これらを税制で同時に押し上げる試みだ。この中間取りまとめが今後の税制改正にどのような影響をもたらしていくか、今後も注視していく必要がある。出典:『研究開発税制等の在り方に関する研究会―中間取りまとめ』