令和5年度の税制改正によって、エンジェル税制の手続きや要件が改正されました。その改正点について解説していきます。エンジェル税制は理解が難しいですが、図を用いて分かりやすく説明をしていくので安心して読み進めていってください!今回の改正点は主に3つあります。1.株式売却時の非課税化2.申請手続きの簡素化3.適用要件の緩和それぞれについて図を用いながら、改正の概要がざっくり分かるように解説していきます。1.株式売却時、繰延から非課税にエンジェル税制の対象であるスタートアップ企業へ投資した際、投資額全額をその年の株式譲渡益から控除されるという優遇措置Bに関して新たな非課税制度が導入されました。これまでの税制では、投資額全額は株式譲渡益から控除されますが、株式の売却時点で結局課税されてしまいます。(課税の繰り延べと呼ばれている)課税されるタイミングが後になるだけで、節税効果はほとんどありませんでした。今回の税制改正で、課税の繰り延べが非課税になりました。つまり、株を売却した時に課税されていた15%が非課税に変わります。キャピタル・ゲインを得た投資家は効果的な節税を行える制度といえるでしょう。非課税になる金額は20億円が上限となります。また課税免除となるためには企業側にいくつか要件があります。対象となるスタートアップ企業は以下の条件のうち全てを満たしていなければいけません。Ⅰ現行のエンジェル税制の要件を満たす。Ⅱ設立5年未満である。Ⅲ営業利益が赤字である。Ⅳ前事業年度まで売上が生じていない。売上が生じている場合、出資金のうち、前事業年度の試験研究費が3割以上を占める富裕層からスタートアップ企業への投資を更に促進させることが狙ってこの制度が創設されたと考えられます。2.申請手続きの簡素化エンジェル税制適用のための書類が以下のように簡素化され、企業側の手続きが楽になりました。エンジェル税制を適用するための企業側の手続きに関する負担が大きかったため、スタートアップ企業にとっては嬉しいニュースでしょう。3.適用要件の緩和(外部資本要件が5/6→19/20)企業側の適用要件であった外部資本条件が緩和されました。外部資本要件とは、特定の株主または特定の株主グループの保有する株式数の割合(持株割合)が5/6を超えてはいけないという条件です。今回の改正でこの要件が5/6から19/20に変わりました。この条件の変更によって、例えば起業家1人の持株割合が90%であっても適用が可能となります。また起業家の持株割合が5/6以上であった場合には、売上高が0であること、もしくは前事業年度の試験研究費の合計額が出資金額に対する割合の3割を超えていなければいけないという条件が課されています。起業特例について株式譲渡益を元手に、自身で新たに会社を設立した場合、会社設立の際の出資額を株の譲渡益から控除し、20億円を上限として非課税とする制度も新たに設けられました。これは株式の譲渡益が対象であるため、多額のキャピタル・ゲインを得た連続起業家が主な対象になります。これによって、一度成功した起業家がその後も再度起業しやすくなるので、日本により多くの連続起業家を増やすことのきっかけになるのではないでしょうか。まとめ今回の税制改正は、企業にとって大きなメリットがあります。手続きが簡素化されたことで、多くの企業がエンジェル税制を活用しやすくなるでしょう。一方で、現行の税制には企業側のメリットが少ない点や手続きの煩雑さなど、まだ多くの課題が残っています。今後の税制改正では、スタートアップにさらに寄り添った制度設計が進むことを期待しています。